間違いだらけの英語学習法

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間違いだらけの英語学習法

昔、スポーツをやっている最中には “水を飲むな”と言われていた時代がありました。

自分が正しいと思っていたやり方が、実は間違っていたということは多々あります。

あなたの人生を左右する英語学習において
「正しいやり方」は最優先に考えるべきことです。

英単語を覚えるために書いてはいけない!

そもそも、英単語を知らないと、文章を 読んだり、聞き取ったりすることはできません。

しかし、英単語の日本語訳を知っていたとしても、また、そのスペルを知っていたとしても、聞き取れない、長文を速く読めない、その単語を使って表現できないのであれば、いくら一生懸命に語彙力を強化しても何の意味もありません。

言葉とは人生において財産のようなものですが、“使えないおもちゃのお金”を貯め込んでも意味がないのと同じです。

ここに“語彙習得”についての誤解があります。

学生時代、定期テストや小テストのために、一生懸命ノートに単語を何十回も書いて練習したことがありませんか。
“単語は手を使って覚えなさい” と言う先生もいましたよね?

しかし、この方法では、長文を速く読んだり、実際に話したりできるようにはなりません。
ここで身につくのは、その単語の“日本語訳”と“無機質な文字の形”のみです。

日本人の英語学習者が語彙を増やす際に、“死んだ単語”と”生きた単語”に留意する必要があります。

“死んだ単語”とは、先ほどの、 “日本語訳とスペルを記憶しているだけの単語” です。
“生きた単語”とはその単語を聞いた時に、あるイメージや感情が頭の中に広がるような単語です。

例えば、日本語で“梅干し”という単語を聞いた時に、反射的に、口の中に唾液が出てくるようなものです。

聞き取れない、イメージが湧かない単語を身につけて、それで単語を知っていると言ってよいのでしょうか?

訳とスペルを覚えるだけの語彙習得ではなく、「正しい音」と「明確なイメージ」に留意して語彙力を高めることこそが必要なのです。

ポイント

音と映像にフォーカスして英語の語彙を習得する。

リスニング力をつけるために聞き流してはいけない!

「リスニング力をつけるには、どうしたらよいのでしょう?」という質問に対して、返ってくる一番多い回答は、「たくさん英語を聞く」というものです。

聞けるようになるまで何度も繰り返し聞くということですが、この回答が正しいならば、洋画や洋画好きの人は皆、英検やTOEICのリスニングで満点が取れるはずですね。

また、4年間英語圏の大学に留学していたという人の多くが、本当に英語の音をきっちりと聞き取っているようには、私はどうしても思えないのです。

次に多い、ちょっと賢い回答は、「発音できるようにする」というものです。なるほど、自分が発音できないものは聞こえてこないということです。

このことは正しいのですが、ネイティヴスピーカーと同じように発音出来るようになるには、どうしたらよいのでしょう。

ここで、口の形、舌の位置、息の出し方を身につける「発音矯正」の技術が必要になります。

また、それは日本人と欧米人の発音の特長を意識したものでなければなりません。壊れた楽器で美しい音楽が奏でられないのと同様に、「発音矯正」なしのリスニングのトレーニングはありえません。

聴覚障害のある子供にとって発話が困難であるという事実があるにもかかわらず、聞こえないとしゃべれないという教訓が、どれだけリスニングの授業に生かされているでしょうか。

ほとんどのリスニングの授業が、なんとなく聞いて、その内容をなんとなく理解して終わっているような気がします。”なんとなく聞く”というのは、聞こえてきた単語から大体の内容を想像するということです。この方法だと、いつになってもリスニング力は向上しません。

本当のリスニング力を身につけるには、“なんとなく”ではなく、“きっちりと”英語を聴けるようになる必要があります。

ここで、確実にリスニング力を向上させるトレーニングについてお話しましょう。

まずは、自分の語彙力に応じた英語の音声をディクテーション(書取り)します。ディクテーションの目的は聞き取れる音と聞き取れない音を区別するためです。

それから、聞き取れなかった音をパターン化(分類)します。聞こえない原因は無限にあるわけではなく、(私どもの分類で) 28パターンになります。

※参照
英語の音が劇的に聞こえてくるリスニングのルール COM L

なぜパターン化する必要があるかというと、完全に聞き取ることの再現性を求めるからです。

そして、音源と自分の”発音のズレ”をなくすために、口の形、舌の位置、呼吸の仕方などの発音矯正をしていきます。

ここまで行わないと、本当の意味でのリスニングはできるようにはなりません。日本人と欧米人の声帯の作りは同じはずです。本当のリスニング力を身につけるためには、ネイティヴスピーカーと間違えられるような発音を身につけましょう。

また、日本人が英語のリスニングが苦手な理由は、聞こえてくる英語の音を”文字”としてとらえてしまうところにあります。

本当のリスニングは、聞こえてきた音を、“映像と感情”で処理する必要があります。

言葉には、「明るさ」、「色」、「匂い」や「感情」までも詰まっています。それらを感じ取るということが、“リスニング”という作業です。

このことが出来るようになるには、音が聞き取れた英文を何度も”感情移入(イメージ化)して発話するトレーニングが必要になります。ある意味、リスニングとスピーキングは表裏一体なのです。

話せるようになるためには、聴けるようにならなければならないということは事実です。
言語習得の入り口であるリスニングから英語学習を始めることが、あなたの英語力向上に大きく影響します。

ポイント

STEP1. 聞き取れない原因を把握しカテゴライズする。
STEP2. 口の形、舌の位置、呼吸器を意識して発音矯正をする。
STEP3. 聞き取れなかった英文を、感情移入して発話する。

読解力をつけるためにただ音読をしてはいけない!

英語学習において、音読や多読が大事だとよく言われます。
スラスラ読めるまで文章を音読することは、言語習得において必要なことであることは確かなことです。

しかし、きちんとした発音を身に付けないでの音読は、”間違った発音を定着させる行為”になります。

このことが“自前の”発音とネイティブの発音のズレにつながり、リスニングに悪影響をもたらすことになります。

英語と日本語では、口や舌の動かし方、呼吸法などが違います。そのために、音読の練習を始める前に、発音も正しい口の形、舌の位置、呼吸法を学ぶ必要があります。壊れた楽器でどんなに練習しても、美しい音楽は奏でられませんよね。

正しい発音をするためのポイントは、語彙や文法の学習と違って、さほど多くはありません。
正しい発音の習得が、その後の学習に大きく影響してきますので、語学学習の初期の段階で正しい発音を身に付ける必要があります。
特に、日本語と英語のように発声法が大きく異なる言語の場合は、なおさらです。

また、音読をする際に、文章を映像化し、感情移入して発話することは大切なのですが、日本語と英語では呼吸法が違うため、頭の中でのイメージの作り方が根本的に違います。

あまり知られていませんが、「呼吸法」が英文を読むスピードに大きく影響します。

日本語には「て」「に」「を」「は」などの格助詞があるために、格助詞のところで区切って、考えながら、言葉を紡ぎ出していきます。

例えば、「私は、昨日、会場に、8時に、行きました。」のように、格助詞で区切りながら発話できます。

これに対して、英語は言いたいことのイメージを作り、大きく息を吸い込み、“一気に”発話します。

I went to my office at eight yesterday.

を区切ることなく、一息で発話します。
英語は、一つのイメージを一息で発話する言語なのです。

もう一つ例を挙げると、関係詞を用いた文では、非制限用法でない限り、先行詞の後で一息ついてはいけません。
例えば、”これは私が昨日買ったペンです”という関係代名詞を使った英文、

This is a pen which I bought yesterday.

という文を、関係代名詞の前で区切らず、一息で発話します。自然と呼吸も腹式呼吸にならざるを得ません。日本人は欧米人に比べ、肺の3分の1ほどの息の量で発話していると言われます。

この”英語の呼吸”を身につけると、読むスピードが格段に早くなります。

正しい音読をするには、正しい呼吸法とイメージ化を学ぶ必要があります。
人の言語習得過程は一語期から多語期へと発展していくので、短い文を正しい発音で感情移入して発話できるようになってから、音読を始めても遅くはないでしょう。

ポイント

音読は、正しい発音と感情移入が出来るようになってから始めましょう。

オウムのものまねみたいなシャドウイングをしてはいけない!

最近、英語学習にシャドウイングが取り入れられるようになりました。その名の通り、英語の音声を影のように後をつけて発話する練習方法です。

このシャドウイングは、元々は同時通訳の訓練の方法の一つで、流れている音と自分の発話の間隔を開けるトレーニングです。

もちろん、この間隔が大きくなればなるほど、ついていくのが難しくなります。

英語学習において音を使うということは良いことなのですが、オウムのものまねみたいなシャドウイングをしても無意味です。

某有名人が目をつぶって、聞こえる音だけに集中してシャドウイングをしている某英語スクールの宣伝がありましたが、これは最悪のシャドウイングです。

実は、英語学習において、このシャドウイングよりも、もっと効果的なものがあります。

それは、オーバーラッピングです。シャドウイングは音声のあとに続けて発話するのですが、オーバーラッピングは音声にかぶせて発話します。

この時、音の高さまでコピーします。子どもの頃、アニメの主題歌をテレビの前で歌っていた経験がありませんか。この時、聞こえてきた音をただ繰り出すだけの受け身的なやり方では効果は出ません。

感情移入をしてオーバーラッピングをすることが大切です。
感情移入するコツは、表情やジェスチャーを使うことです。
必ず、鏡を使って下さい。鏡に映る表情や口の動きを意識してください。

感情移入して発話することによって、また同じ内容の音声を聞いた時に、同じような感情や映像が作られるようになります。

スピーキングとリスニングのトレーニングは表裏一体なのです。

ポイント

英語学習においては、通訳の訓練法であるシャドウイングよりも、オーバーラッピングの方が有効である。その際、表情やジェスチャーを用いて、感情移入して行うこと。

日本語を訳するような英作文をしてはいけない!

どんなに英作文のトレーニングをしても、日本人の英語学習者は、“日本語を訳したような英語”を書いてしまいがちです。

例えば、レストランでカレーを注文する時、”私はカレー。”と言いたくて、”I am curry.” と言ってしまうようなことです。

このような文章を添削して矯正しようとしても、学習者の“心理的英文法”が矯正されない限り、正しい英文を書けるようにはなりません。

“心理的英文法”とは、言葉を繰り出すための心理状態とも言えるでしょう。

例えば、三人称単数の“s”についてですが、どうしたら、この“s” を忘れずに付けられるようになるのでしょう? 100回書く練習をしたら、できるようになるのでしょうか? おそらく、無理でしょう。

言葉を繰り出すのは心理です。その心理が変わらない限り、正しい英文を繰り出すことは不可能です。

そもそも、この三単現の“s”って、必要なのでしょうか?

He lives in New York.とHe live in New York.では、伝わる内容に大きな差があるようには思えません。

シンガポールやマレーシアの人が話す英語に三単現の“s”が入っていないのも、よく耳にします。

しかし、どうしたら、私たち日本人が会話や作文において英語のネイティヴスピーカーと同じように三単現の“s”を付けられるようになるのでしょう?

先ほど述べましたように、言葉を生み出す根源は“心理”です。三単現の“s”を生み出す心理を作り上げなければなりません。

この心理には西洋のindividualism(個人主義) の影響もあるかもしれません。私でもない、あなたでもない、現在に存在する“個”に対して、リスペクトを払うという心理です。

“個”を認識すると、複数の感覚が出てきます。日本語では、一本の鉛筆、二本の鉛筆、のように複数のマーキングがありません。

“子ども” という単語は、一人であっても複数形です。

外国語学習において、文法のルールを学ぶことはもちろん大切なのですが、その文法を生み出す“心理”を理解することも必要なのです。

英文日記を書いたりして、自分が思ったことを文章にする練習は意義のあることなのですが、英語学習の初心者の場合、日本語を訳したような英文を書いてしまいがちです。

この英文を添削して矯正しても、あまり効果は望めません。

代わりに、自分にあったレベルの文章を写経のように写すことをお勧めします。この時、ただ文章を写すのではなく、冠詞の使い方など文法ポイントを押さえながら、書いて下さい。

このことによって、英語の“文体”が身に付きます。

日本語でも作家を目指す人が先輩作家の文章を書き写すことはよくあることです。

出来れば、音声付きの文章が良いでしょう。書き写した後に、自分が書いた文章を感情移入してオーバーラッピングしましょう。4技能が身に付く効率的な学習です。

ポイント

英作文の学習は、自分が目標とする文章を、文法を意識して、書き写す練習をする。